くもへび「連載ブログ」


■ 第二話〜海底人〜その6 2007.07.06 Friday 13:14
「フレディ…あの…」
凜はフレディの視線を逃れるように下を向いた。
「もし私が…フレディと結婚することにならないとしたら…、フレディは翼を無くしてしまうの?」
フレディはすぐ返事をする事が出来なかった。
「あのね…結婚したくないとか、フレディが嫌いとか…そういうのじゃ無くて……いまいち良く分からなくて…」
何だか凜は、申し訳ない気持ちで、目の奥が熱くなった。
すると、ぽん、と凜の頭にフレディの手が乗った。
「なんだ凜、そんな事か。俺だって凜に無理強いしないし、凜がそうしたくないならしなければいい。翼を無くしても、凜と同じ人間になるだけだろ?今と変わらないじゃないか。それに凜の気持ちの整理がつかないなら、それが分かるまで俺はいつまでも待てる」
凜は、胸がカーッと熱くなった。
嬉しい気持ちと、よく分からない気持ちで一杯になった。

■ 第二話〜海底人〜その5 2007.07.03 Tuesday 13:33
海流から離れるのには、さほど苦労することは無かった。
流されている時はカナリのスピードで進んでいけるのだが、その流れに入る時も、出るときも、意外とスムーズにこなすことが出来た。

光の点でしか無かったそれは、今や目の前に大きくそびえる巨大な城となり、白い珊瑚礁で出来たいびつな建物の、所々に空いている窓のような穴からは光が漏れていた。
建物の周りには沢山の魚や、海底人が泳いでいる。

「ここが、海底界よ、凜ちゃん。鱗を飲んでない異界人だったら、とっくに水圧で潰されているところね。」
リミエルは説明しながら、建物の上の方の窓…いや、それぞれは入り口なのかも知れない、その穴へ向かって泳いだ。
色んな場所で、同じように海底人が出たり入ったりしている。
「すごい…大きな家…ここに海底人みんなが住んでるの?」
凜はすこしごつごつする白い壁を触りながらリミエルに訪ねた。
「ううん、ここは海底界でも中心の場所なの。だからこの海の別の場所には、それぞれまた街があるのよ」
そう言って、リミエルは一つの家(?)の中へ案内した。
珊瑚で出来たテーブルやイス、そして部屋の中には海草も揺れていて、おとぎ話チックな作りになってはいるが、生活感がある。

リミエルは入り口を岩で塞ぎ、その後、何か大きな渦巻きの貝殻を、ペコッと叩いた。
すると貝殻からはぶくぶくと泡が出てきて、あっという間に凜達の居る部屋から水が引いていった。
壁が全て珊瑚で出来ている為、水はけも良い。
「何だか…ホント夢みてる見たい…」
凜は一部始終を見て、思わず口に出した。

「さぁフレディ、話してもらおうかな。今回ここに来た理由は、私と海底界を凜ちゃんに案内するだけじゃないんでしょ?」
リミエルが切り出した。
「えっ…」
突然言われて、フレディは戸惑っている。
「顔に書いてあるのよね。フレディ、私たち何年付き合ってると思ってんの?」
そう言ってリミエルは目を細めて、にやにやと笑った。

「凜ちゃん、海底界ってね、すごく有名な式場がいっぱいあるのよ〜。天界人だってよく利用する程…。景色もキレイだし、お料理も美味しいし…」
「式場…?」
そう言って凜はハッとなった。

(は、早すぎるよ。結婚式なんて…。私たちまだ……)

「リミエル!」
フレディは顔を少し赤らめながら強く言った。
明らかに照れ隠しなのはバレバレだ。
「大丈夫だって、一番素敵な式場を手配してあげるから♪」
妙にノリノリなリミエルに、フレディはため息を吐いた。


凜は、困った顔をしながらも、なんだか自然と顔がほころんでしまっていた。
周りを見渡せば全く見知らぬ世界。
世間で噂になっている異世界に居るのだ。
もし、あのときフレディが家に飛び込んで来なければ…。
そもそも、フレディが凜に一目惚れをしていなければ…。

ふと、凜は頭の中に疑問が浮かんだ。
リミエルとフレディが、どちらの世界が全ての元になったかを言い合いしていた時、フレディは「人間と海底人は、掟を破って翼を奪われた者達」と言っていた。
あのときは言い合いを止めようと必死になっていて深く考えられなかったが、
これって、天界人が人間に姿を見られても、結婚出来ず、殺しもしなかった場合、翼を奪われるという事なのだろうか。
と言うことは、もし自分がフレディと結婚しなかった場合…。
あのフレディの見事な白い翼は、永遠に失われてしまうのだろうか。

今はまだ、自分がどんな気持ちなのか整理がつかない。
確かに好きだと言われて嬉しい気持ちはあるが…それは自分がフレディの事を好きだと言えるのだろうか。
自分の気持ちも分からないままでいるのは失礼だろう…。

凜は不安にかられ、横にいるフレディの腕を掴んだ。
「フレディ…」
「うん?」
フレディは凜に気づいて、顔を向けた。
■ 第二話〜海底人〜その4 2007.06.28 Thursday 13:26
泳ぐ、と言ってもクロールや平泳ぎをするワケではなく、水中を進むのはなかなか難しかった。
泳ぎ慣れているフレディに引かれ、足をしきりに動かすことしか出来ず、凜は自分の姿が滑稽に見えているだろうなと感じた。

「海の中には、潮の流れがすごく急なところが沢山あって、私たちは主にその流れに乗る事で色んな場所を行き来してるのよ」
そう言ってリミエルは、泳ぐ早さを少し落とし、凜の隣に並んだ。
「ほら、あの流れが見える?魚が沢山泳いでいるでしょう?」
リミエルの指さす方向に、キラキラと光る魚の群れが、一本の太い線状になって流れていくのが見える。
「すごい…まるで海の中の道路ね…」
その中には、チラホラと海底人であろう姿も見え隠れしていた。
「さぁ、私たちもアレに乗るわよぉ!」
そう言うとリミエルは再びスピードを出して凜達の前に出て、海流に向かってまっすぐ進んでいった。

■ 第二話〜海底人〜その3 2007.06.26 Tuesday 13:02
「気を取り直して…、はい、凜ちゃん。これを渡しておくね」
そう言ってリミエルは、小さな魚の鱗を数枚凜に手渡した。
「この鱗は…?」
凜が一枚手にとって透かして眺めていると、横からフレディが身を乗り出した。
「それを飲むと、1枚で2時間は海に潜っていられるんだ。俺たち天界人が海底人に会いに来るとき使えるよう、昔の海底人が作り出した鱗だよ」
「海の中で呼吸が出来るようになるの?」
こんなただの鱗で?と言う風に、凜は鱗を裏から見たり、少し曲げてみたりした。
「使い心地は、いつも使ってるフレディに聞くと良いんじゃない?…でも、どっちにしても今から海に潜ってもらうから、飲んでもらわないとだけどねっ」
そう言うとリミエルは、水面と同じ高さになっている平らな岩場へ歩いていった。

■ 第二話〜海底人〜その2 2007.06.22 Friday 12:42
海の真ん中にぽっかりと浮かぶその岩場に、フレディと凜は降り立った。
「すごい、周りが全部海!」
凜はその場で一周した。

「ところでフレディ…、来たかった所って、ここなの?」
凜が多少不安そうな面持ちでフレディを見上げる。
「あぁ、ここというより…より詳しくは、ここの下、かな」
そう言ってフレディは、白い翼をたたんでいった。
大きく白く光っていたその翼は、フレディの背中に吸い込まれるように消えていく…。
凜は名残惜しそうにその一部始終を眺めていた。

■ 第二話〜海底人〜その1 2007.06.20 Wednesday 22:57
「いってきまーす」
「いってらっしゃい」
母の返事が聞こえる。

今日は休日。
私服に着替えた凜は、フレディに誘われ外に出掛ける事になった。
「連れて行きたい場所がある」
と、行き先は詳しく話さなかったが、凜は二つ返事でOKした。

■ 第一話〜天界人〜その14 2007.06.19 Tuesday 12:56
あれから、話がとんとん拍子に進んでいった。
フレディと一緒になる事を選んだ凜は、「結婚」という所まで一気に行くワケにはいかないので、まずは付き合う事から始めよう、ということになった。
が、フレディは人間界で暮らす為の家が無い。
しかし、さきが凜の母に、「凜と転校生のフレディは恋人同士」なのだと言うことと、「こっちに住む部屋が必要だ」と言うことをペラペラと話せば、凜の母は何の躊躇も疑いも無く、凜の兄の部屋を貸す事を承諾したのだった。

そうしてフレディは、凜が通う高校に転入することとなった。



■ 第一話〜天界人〜その13 2007.06.14 Thursday 13:16
「ちょっと!フレディ焦りすぎ!」
さきは慌ててフレディの腕を引っ張った。
「ほら、凜が放心状態になっちゃったじゃない!」
「え…だって」
「だって、じゃないよ。やっぱり一度に色々話しすぎだよ…」
そう言うとさきは、凜の両肩に手を置き、少し揺すった。
ハッと我に返った凜の目を見つめて、なだめるように優しく言葉を発する。
「凜…。急に色々と…混乱させてゴメンね。でも、毎日つまらない…ってため息をついてたあの頃の凜と、目つきが変わってる。自分でも分かってるんじゃない?」
■ 第一話〜天界人〜その12 2007.05.10 Thursday 21:50
今までの騒動は一体なんだったのか…
凜の心の中には色んな物が渦巻いた。
突然天界人がやってきて殺すと言われ…
友達の彼氏は殺され…
一体自分はどうしたら良いのかと頭を悩ませ…
しかしそれらは全て作られた物だった。

「なんで……最初から普通に伝えてくれないの」
凜は少し声を震わせて言った。
「え?」
口論をしていたさきが、気づいて凜の方を向く。
「凜…」
さきは、真面目な顔に戻った。
「実はね、この騒動には、もう一つ大きな理由があるのよ」
そういってさきは、フレディと顔を合わせた。
「まぁ、フレディが面と向かってハッキリ告白出来るだけの勇気があれば普通に言ってたかも知れないよ?でも、もしいきなり来て『天界人ですけど貴方が好きです付き合ってください』なんて言われたら、どお?」
凜は、う〜ん、とうなった。
「確かにいきなりそう言われたら、確実に変人だと思うね…」
「でしょ?…それに、こうするしかなかったもう一つの理由っていうのは、フレディの方にあるのよ」
「えっ?」と、凜はフレディに目をやった。

■ 第一話〜天界人〜その11 2007.05.02 Wednesday 12:06
先ほどにも増して驚きを隠せない凜に向かって、さきは笑顔で話した。
「別に、騙すつもりじゃ無かったんだよ?…だって、私も天界人だってばれたら、凜を殺さなきゃいけなかったかも知れないんだから…」
「でも、さき…あの小説…なんで?」
天界人と人間の恋愛を描いたベストセラー小説を、さきが必死に読んでいるのを凜は思い出した。
「ん〜、あれは…一石二鳥かな!」
「…え?」
「私は天界人、ダーリンは人間でしょう?…逆転の発想よ、逆転の。…それに、天界人の存在をスムーズに凜に受け入れてもらのに、こうして私も地道にアピールしてたってことよ♪」
さきはいつにも増して機嫌が良いようだ。
今朝までのさきとは大違い……

「あ!さきっ。ダーリンはどうなったの!?死んだんじゃ……」
「え…っとそれは…。……ダーリンにも今回のことは協力してもらっているからね♪ダーリンは今旅行中〜」

「あ…あはは…」
凜は脱力し、その場に座り込んだ。
この三日間必死になっていたあの思いが、一気に気の抜けたものになったのを感じた。

「だから凜ちゃんには刺激が強すぎるかもって言ったじゃない〜」
「でもこれしか方法が……それにアイリーが…」
放心状態になった凜の隣で、さきとフレディの口論が続いた……。
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