くもへび「連載ブログ」


■ 第二話〜海底人〜その3 2007.06.26 Tuesday 13:02
「気を取り直して…、はい、凜ちゃん。これを渡しておくね」
そう言ってリミエルは、小さな魚の鱗を数枚凜に手渡した。
「この鱗は…?」
凜が一枚手にとって透かして眺めていると、横からフレディが身を乗り出した。
「それを飲むと、1枚で2時間は海に潜っていられるんだ。俺たち天界人が海底人に会いに来るとき使えるよう、昔の海底人が作り出した鱗だよ」
「海の中で呼吸が出来るようになるの?」
こんなただの鱗で?と言う風に、凜は鱗を裏から見たり、少し曲げてみたりした。
「使い心地は、いつも使ってるフレディに聞くと良いんじゃない?…でも、どっちにしても今から海に潜ってもらうから、飲んでもらわないとだけどねっ」
そう言うとリミエルは、水面と同じ高さになっている平らな岩場へ歩いていった。

「海底界だって、普通の人間じゃ来られるような所じゃないんだ。すごく綺麗な所だし、凜にも見せたかったんだよ。…もし怖いなら、やめても良いから」
フレディは、どこからか出した自分用の鱗を数枚、指につまんでいた。
「…ううん。怖くない。見に行きたい!」
そう言って凜は、渡された鱗を口に放り込み、一飲みした。
それを見ていたリミエルは、ニッコリと頷き、岩場に腰を下ろした。
「じゃあ、行くわよ!」
すると、リミエルの足先が、みるみる繋がっていく…。
足先はヒレのようになり、足首の辺りから上にかけては魚のようになり、見事に人魚の姿へ変わっていった。
しかしそれに見とれる暇も無く、リミエルはすぐに水中へと潜っていってしまった。

凜もリミエルの後を追い、水際まで来たものの、吸い込まれそうな深く黒い色に、多少躊躇するのだった。
「凜?」
心配そうに凜の顔を覗くフレディ。
「大丈夫、行こう!」
そう言って、手をさしのべた。
凜はフレディの目をしっかりと見つめて、それからその手を握った。

ジャブッ!
…と、凜はフレディに引かれるようにして海へ潜っていった。


思わず目をつぶってしまう。
目を開けたら、暗い海に吸い込まれそうな気がした。
でも、しっかりと握られた手からは、フレディの体温を感じて、それが凜にとって救いでもあった。

「凜ちゃん」
リミエルの声が聞こえる。
水の中なのに、妙に鮮明だ。
ゆっくりと目を開けてみると、目の前を、こちらを向きながら泳いでいくリミエルが見えた。
それに、真っ暗だと思っていた海の中は、日の光が十分海中まで届いていて、光の柱がゆらゆらと揺れて、あらゆる場所からは、その光に反射して光っている魚の群れが見える。
(きれい…)
と、凜は思った。

が、次第に息が苦しくなってきて、凜は一体どうしたらいいのか分からなくなった。
もらった鱗で、水中でも息が出来るようになるということだけど、それがどのように息が出来るものなのか、はたしてきちんと呼吸が出来るのだろうか、と心配になってきた。
その様子を察したのか、フレディは掴んでいた凜の手を少し引き、凜の身体を支えるようにして言った。
「凜、息止めてるだろ?」
凜はこくこくと頷いた。
「じゃあ、今溜めてる息、全部はいてみなよ」
そう言われて凜は、おそるおそる口から泡を出した。
「それからゆっくり、少しずつ、普通に息を吸うようにして」
凜は、口をとがらせるようにして、少しだけ吸ってみた。
当然口の中に水が入ってくるが、全く苦しくない。
もう少し、今度は多めに息を吸ってみた。
口からも鼻からも水が入ってくるが、それに全く痛みや苦しさは感じず、水を空気の様に吸ったり吐いたりすることが出来た。
「すごい…!水の中で息が出来る!」
凜は思わず声を出した。
「上出来!おめでとう!」
前を泳いでいたリミエルはそれを見ていて拍手をした。

「さぁ、海底まではまだ結構あるけど、急流に乗っていくからね〜!そうすればあっと言う間よ!」
身を翻し、進行方向へ向きなおしたリミエルは、少し泳ぐスピードを速めた。
フレディと凜は、その後を追った。
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