くもへび「連載ブログ」


■ 第二話〜海底人〜その4 2007.06.28 Thursday 13:26
泳ぐ、と言ってもクロールや平泳ぎをするワケではなく、水中を進むのはなかなか難しかった。
泳ぎ慣れているフレディに引かれ、足をしきりに動かすことしか出来ず、凜は自分の姿が滑稽に見えているだろうなと感じた。

「海の中には、潮の流れがすごく急なところが沢山あって、私たちは主にその流れに乗る事で色んな場所を行き来してるのよ」
そう言ってリミエルは、泳ぐ早さを少し落とし、凜の隣に並んだ。
「ほら、あの流れが見える?魚が沢山泳いでいるでしょう?」
リミエルの指さす方向に、キラキラと光る魚の群れが、一本の太い線状になって流れていくのが見える。
「すごい…まるで海の中の道路ね…」
その中には、チラホラと海底人であろう姿も見え隠れしていた。
「さぁ、私たちもアレに乗るわよぉ!」
そう言うとリミエルは再びスピードを出して凜達の前に出て、海流に向かってまっすぐ進んでいった。

海流の近くまで来ると、周りの水の流れも速くなり、それが海流に引き込まれていくのが分かる。
凜達の後ろから、横から、魚たちの集まる量が増し、それらは海流へ向かって凜達を追い越していった。

海流に到達すると、ぐん、と潮の流れに引き込まれた。
とはいえ、勢いが激しすぎるワケではなく、流れに入ってみれば身を任せれば良いだけで、変にクルクル回ったりすることも無かった。
「気持ちいい〜!流れるプールみたい!」
「プール?」
リミエルが振り返った。
「リミエルは人間界の事、ほとんど見たことないからな、プールも知らないのか」
自分も人間ではないくせに、フレディが笑っている。
「プールは…えっと、小さな海みたいなもので…水を溜めて遊ぶ所よ」
「へぇ…面白そう!今度連れて行ってよ凜ちゃん!」
「うん!…あ、でも…勝手に人間界に来るのは…」
凜は思わず返事をした後に、天界人の掟の事を思い出した。
「大丈夫、私たち海底人は、人間にこの姿さえ見られなければ、バレること無いんだから」
そう言って『足』をヒラヒラと動かし、リミエルは笑った。

「そういうお堅い事してるのって、…天界人だけなんじゃないの〜?」
リミエルは、いたずらな笑顔で、フレディを見た。
「そんなの、俺に言うなよー。大体…、海底人って元は天界人だって言うじゃないか」
「えー、そんなの嘘嘘!天界人も人間も地底人も、みんな元は海底人だったのよ!」
「いや、人間も海底人も、天界人が掟を破って翼を奪われた者達なんだ、って聞いたぞ」
二人は一気に二人だけの世界になる。
「待って待って!フレディ、リミエル…さん。先祖の事はとりあえず…ね?…それより、地底人って…?」
凜は、何となく自分のポジションを自覚し始めながら、話題を変えることにした。
「呼び捨てで良いわよ、凜ちゃん。……地底人ね。」
そう言って落ち着きなおしたリミエルは、ふぅ、と呼吸をした。

「…あまり、大きな声じゃ言えないけど。この海には、地底界っていう所もあるのよ。」
「地底界…?」
「そう、地底人が住んでいる所。…海、というか、海底界の隣、人間界の下、と言った方が正しいわね」
そう言ってリミエルは、海中にそびえる岩壁を見やった。
その上には人間界がある。
「さっき言い合ってた話と同じような話になるけど、地底人っていうのは、実は元は海底人なのよ、これは本当」
「え?何で…」
「昔ね、海底界で悪さをした人達を、岩場の方へ追いやったの。自由に海を泳ぐことを禁じられた悪人達は、仕方なくその岩場の洞窟に住むようになって、当然海で泳ぐ事の出来る変形能力は退化。じっと暗い穴の中で生活することで、奇形な者達が多く産まれるようになった。」
そう言って、リミエルはきょろきょろと辺りを見回した。
「…今でも、その子孫達がひっそりと、海から住む場所を奪われた先祖達の恨みを晴らすべく、私たち海底人を日夜狙っているらしいわよ…」

岩壁には所々穴が空いており、その大小ある黒くぽっかりと開いている穴の様子は、獲物を待ちかまえている怪物の口の様にも見えた。
凜は背筋がぞぞっと寒くなった。

「まぁ、一度も攻めて来られた事なんて無いんだけどねぇ!」
雰囲気を壊すように、リミエルの笑い声が響いた。
「やだ!ちょっと怖かったじゃない!」
そう言って凜も苦笑いした。
凜が岩壁から少し離れるように移動すると、フレディはその凜の壁側に並んだ。
「さぁ、もうすぐ着くわよっ!」
目で確認出来るくらいの位置に、かすかに光の点がいくつか見え始めた。
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